- 家賃補助制度のおトクな使い方が知りたい!
- 保育士の家賃補助制度っていつまで続くの?
- 宿舎借り上げ支援事業って何?
インターネット上には保育士さんの家賃補助制度について色々な情報が飛び交っています。実際に確認してみたところ、中には明らかに間違っている情報もありました。宿舎借り上げ支援事業は基本的に毎年制度が少しずつ変わるため「調べた情報が昔の内容だった…」なんてこともよくあります。
家賃補助は保育士さんなら絶対に活用すべき制度です。しかし、間違った情報を信じてしまうと、本来もらえたはずのお金をもらえなくなってしまうこともあります。
私はこれまで保育業界で5年以上働きながら、保育士さんの家賃補助にも携わってきました。そこでこの記事では、保育士さんが家賃補助制度をしっかり活用できるように、以下の内容を詳しく解説しています。
- 制度の詳細
- 活用するメリット・デメリット
- 活用するときの注意点
- 正しい情報の調べ方
- 今後の制度の動向
今保育園で働いている保育士さんや、これから保育園に転職を考えている方にとって必ず役立つ内容です。
ここまで宿舎借り上げ支援事業について詳しく解説している記事はなかなかありません。
・宿舎借り上げ支援事業って何?
▶︎保育士さんの家賃を月最大8万2千円まで保育園が負担してくれる家賃補助制度
・家賃補助制度(宿舎借り上げ支援事業)のおトクな使い方が知りたい!
▶︎補助金額が高くてルールがゆるい区市町村の保育園を狙う
・家賃補助制度(宿舎借り上げ支援事業)っていつまで続くの?
▶︎いきなりなくなることはないが、徐々に補助内容が手薄になっていく
宿舎借り上げ支援事業は保育士さんの家賃補助制度
宿舎借り上げ支援事業は、保育士さんの家賃を保育園が補助してくれる制度です。
物件は保育園(運営会社)が契約する
普通は物件を借りるとき、住む人が大家さんなどから直接物件を借りる(自分が借主になる)ことになります。
宿舎借り上げ支援事業を使うときは、保育園(運営会社)が大家さんなどと契約する必要があります。保育士さんは保育園(運営会社)が借り上げた物件に住むことになります。
以下が宿舎借り上げ支援事業の流れです。
大家さん ▶︎【物件契約】▶︎ 保育園(運営会社) ▶︎【物件貸出】▶︎ 保育士さん
間違って保育士さんが自分の名前で物件を借りてしまうと、補助を受けられなくなってしまうので注意が必要です。保育園で働きはじめる前に、必ず詳しい手続き方法を保育園に確認しておきましょう。
モレなく補助を受けるためには、事前に手続き方法を保育園にしっかり確認しておくことが大切です。
宿舎借り上げ支援事業の対象は常勤保育士
基本的には、宿舎借り上げ支援事業は常勤(正社員など)の保育士さんを対象とした制度です。そのため、基本的にパート保育士さんや保育士さん以外の職員は制度の対象外になります。
ただし、パート保育士さんでも以下の条件を両方満たしていれば補助を受けられる可能性があります。
- 月120時間以上働く契約になっている
- 1年以上働く契約になっている
最終的に補助対象を決めているのは各保育園なので、上の条件を満たすパート保育士さんは保育園に補助対象になるか確認しておきましょう。
東京都は保育士以外の職員も補助対象
自治体によっては保育士さん以外の職員も対象にしていることがあります。たとえば、東京都は保育士さん以外にも以下の職員を対象にしています。
- 施設長
- 看護師
- 栄養士
- 調理員
- 保育補助者(無資格者)
ただし、最終的には各保育園が対象職員を決めています。
東京都内の保育園だからといって、必ず上の職種の方が補助を受けられるわけではないので注意が必要です。
地域によって補助上限額が違う
月にいくらまで補助してもらえるのかは地域によって異なります。
注意が必要なのは、補助上限額は「住む場所」ではなく、「保育園の場所」で決まるということです。そのため、近くの保育園でも区市町村が違うだけで補助額が変わることがあります。
- 大阪市内の保育園で働く保育士Aさん 補助上限額は6万6千円
- 尼崎市内の保育園で働く保育士Bさん 補助上限額は6万2千円
そのため、少しでも多く補助を受けるためには、働く保育園の場所(区市町村)選びが大切になってきます。
宿舎借り上げ支援事業のメリット
最大のメリットは毎月の生活費をグッと安くできること。保育士さんに聞いた保育園退職理由の第2位(29.2%)が「給料が安い」です。(「保育士の現状と主な取組(令和2年8月24日)」より)
宿舎借り上げ支援事業には、最大で年間約100万円のお給料アップと同じ効果があります。そのため、宿舎借り上げ支援事業を使うことで、「お給料の悩み」はだいぶ解消されるはずです。
生活費で一番お金がかかるのが家賃だから、補助してもらえるのはすごく助かる。
毎月の家賃があるのとないのでは、自分で使えるお金の額がまったく違います。宿舎借り上げ支援事業は「保育士さんだから使える特権」です。
お給料アップを叶えてくれる制度は宿舎借り上げ支援事業だけではありません。ほかの給料アップ制度はこちらで詳しく解説しています。
【給料が安い?】保育士さんが知っておきたい給料引き上げ制度【転職を考える方必見】
宿舎借り上げ支援事業のデメリット
今後の動向が不透明
残念ながら、宿舎借り上げ支援事業は今後も続くことが約束されている制度ではありません。
とはいえ、いきなり制度がなくなることは考えにくいため、活用必須の制度であることには変わりません。
今後の動向については後ほど詳しく説明します。
住む場所を制限される場合がある
宿舎借り上げ支援事業には細かいルールがたくさんあります。中でも気をつけるべきルールが「物件の場所の制限」です。
- 家賃補助を使う場合は、保育園から2km圏内の物件に住むこと
保育園の近くに住むと、保護者と生活エリアが重なるよね。
「休日にスーパーに行ったら保護者と遭遇!」なんてことも。休日は仕事から忘れたい人は、物件の場所に制約がない(もしくは少ない)保育園を選ぶのがおすすめします。
交通費が支給されない場合がある
家賃補助を受けている保育士さんを交通費補助の対象外にしている保育園は多いです。交通費の支給ルールは各保育園が決めているため、気になる方は転職エージェント経由で保育園に確認してもらいましょう。
「保育園の近くに住めるのに遠くに住むのは保育士さんの勝手」と考える保育園は多いです。
転職エージェントについてはこちらの記事で解説しています。
【保育士求人の探し方】転職エージェント活用完全マニュアル【おすすめをプロが解説】
宿舎借り上げ支援事業のお金の流れ
宿舎借り上げ支援事業の基本的なお金の流れは以下のとおりです。
保育士がお金の流れを知る必要はないんじゃない?
お金の流れを知ることで、なぜこんなルールになっているのか分かるので、保育士さんも知っておいた方がいいです。
国 ▶︎【補助金】▶︎ 都道府県 ▶︎【補助金】▶︎ 区市町村 ▶︎【補助金】▶︎ 保育園 ▶︎【物件】▶︎ 保育士
保育園は区市町村からお金をもらって、そのお金を使って保育士さんに住んでもらう物件を借りています。押さえておきたいポイントは以下です。
- もとは国の制度(国からスタートしている)
- 国の制度では地域ごとに単価(補助上限額)が決まっている
- 都道府県や区市町村が国の補助内容に上乗せしていることがある
- 保育園は基本的に区市町村からお金をもらっていて、細かいルールが区市町村ごとに違う
- 区市町村のルールに基づいて、各保育園はそれぞれルールを決めている
宿舎借り上げ支援事業のルールを確認する手順
確認手順(しっかり確認したい人向け)
お金の流れがわかると、制度を確認するおすすめの方法も自然と決まってきます。「しっかり確認したい!」という方は以下の手順がおすすめです。
宿舎借り上げ支援事業の補助上限額ができるだけ高い区市町村を選びましょう。
「もう働きたい地域は決まってるよ!」という方はステップ2からはじめてください。
まずはインターネットで「〇〇(自治体名) 保育士 宿舎借り上げ」で検索してみましょう。
区市町村のホームページが検索結果に出てきた場合は、区市町村のホームページを確認します。
区市町村以外のサイトの情報は間違っている可能性があるので正直おすすめできません。
以下の場合は、直接自治体へ電話して確認するのがおすすめです。
- 区市町村のホームページを見てもよくわからない
- そもそも検索結果に区市町村のホームページが出てこない
電話対応の良し悪しは担当者次第ですが、丁寧に質問すれば教えてくれることも多いです。
調べた区市町村の制度と比べて、おかしな保育園独自ルールがないか確認しましょう。
独自ルールを作っている保育園は転職先としてあまりおすすめできません…
簡単に確認したい人は転職エージェントを活用する
ルールの確認方法はわかったけど、自分で確認するのは大変そう…
簡単に制度を確認したい方は転職エージェントを活用しましょう。
転職エージェントを活用すれば、簡単に宿舎借り上げ支援事業のルールを確認できます。
転職エージェントについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
▶︎【保育士求人の探し方】転職エージェント活用完全マニュアル【おすすめをプロが解説】
宿舎借り上げ支援事業のルールの中で特に確認するべきポイント
区市町村や保育園に宿舎借り上げ支援事業について確認するときは、以下の内容について確認しておきましょう。
- 物件の場所に制限はあるか(保育園の近くに住まなければいけないなど)
- 初期費用(敷金・礼金・引越し費用等)は補助の対象になるか
- 同居人がいる場合も補助してもらえるか(「親族はOK・恋人はNG」などの細かい条件まで確認しておく)
このあたりのルールは区市町村や保育園によって違うため、しっかり確認しておきましょう。保育園に確認するときは、上の内容に加えて、以下の内容まで確認しておくと安心です。
- 宿舎借り上げ支援事業を使った場合でも、交通費補助の対象になるか
- 特別な制約はないか(「1年以内に退職した場合は全額自己負担になる」など)
知り合いの保育士さんが「1年以内に退職したら家賃を全額負担してもらう」って保育園に言われたって聞いたよ。
保育園の独自ルールがあったために「退職時に保育園から大金を請求された」という話もあるので注意が必要です。
宿舎借り上げ支援事業はいつまで続く?|国編
急に「今年から廃止!」といったことはないと思いますが、徐々に補助内容が薄くなっていく可能性は高いです。国の予算内容をみると、今後段階的に補助対象者を絞っていくと書かれています。
2023年度からは対象者がさらに絞り込まれます。今後も段階的に対象者が絞り込まれていく可能性が高いです。
- 2022年度まで 8年目までの保育士さんが補助対象
- 2023年度から 7年目までの保育士さんが補助対象
一方で、待機児童ゼロを目指して特に都市部を中心に保育施設が一気に作られました。そのため、多くの自治体が保育士不足に苦しんでいるのが現状です。
国も家賃補助が保育士の離職防止につながる重要な制度だと分かっているはず。そのため保育士不足で苦しんでいる今、制度を廃止するのは難しいはずです。
令和5年度の宿舎借り上げ支援事業(国の動向)
国の令和5年度の予算要求の内容をみると、宿舎借り上げ支援事業は掲載されています。そのため、5年度も実施されるとみてよいでしょう。
令和5年度保育関係予算要求の概要(厚生労働省)
※PDFファイル30ページに宿舎借り上げ支援事業について記載あり
次年度予定している補助内容は、国の予算要求資料を読めばある程度わかります。
保育士の間で毎年「宿舎借り上げ支援事業は今年で終わりらしい」っていう噂が流れるよ。
なぜか毎年そのような噂が流れるようです。根拠のない噂に惑わされないように注意が必要です。
宿舎借り上げ支援事業はいつまで続く?|東京都編
結論、東京都の宿舎借り上げ支援事業もスグになくなる可能性は低いです。なぜなら、東京都は全国トップクラスに保育士が足りていないからです。
制度 | 国の制度 | 東京都の制度 |
---|---|---|
対象者 | 保育士のみ | 保育士、施設長、看護師、栄養士、調理員、保育補助者 |
対象年数 | 9年以内 | 制限なし |
単価 | 最大8万2千円(地域によって異なる) | 一律8万2千円 |
そのため、東京都では国の制度を超える内容の補助になっています。
東京都内の保育園は働く保育士さんにとって非常におすすめです。
令和5年度の宿舎借り上げ支援事業(東京都の動向)
令和5年度の宿舎借り上げ支援事業は実施されるの?
東京都の予算資料をみると、宿舎借り上げ支援事業は掲載されています。そのため、5年度も実施されるとみてよいでしょう。
令和5年度予算要求について(東京都福祉保健局)
※PDFファイル61ページに宿舎借り上げ支援事業について記載あり
今後は東京都の制度も改悪の可能性がある
現在東京都では、国の制度に東京都が補助を上乗せする形で制度が実施されています。国の制度改悪が進んでいますが、東京都が国の改悪分を補っているため、東京都の補助内容はこれまでと同じ水準を維持しています。
東京都がいつまで今の制度を維持してくれるかは分からないよね。
東京都の制度も国の制度と同じく、改悪される可能性は十分あります。
東京都の補助額ランキング
東京23区の中には、東京都の補助に加えて、さらに区が独自の補助を上乗せしているところがあります。基本的に東京都内の保育園の補助額は8万2千円ですが、これらの区は8万2千円を超える補助を行っています。
ここでは東京都内の区市町村の中で、補助単価の高い自治体トップ3を発表します。
順位 | 区 | 補助上限額 | 備考 |
---|---|---|---|
第1位 | 千代田区 | 13万円 | 千代田区外に住む場合は補助上限額8万2千円 |
第2位 | 港区 | 11万2千円 | 港区外に住む場合は補助上限額8万2千円 |
第3位 | 渋谷区 | 10万円 | 原則渋谷区内に住む必要あり |
保育園の場所でこんなに補助額がちがうのね。
これから働く保育園を決めるなら、補助額の高い地域で働くのがおすすめです。
まとめ
宿舎借り上げ支援事業は保育士さんにとって活用必須の制度です。ただし、宿舎借り上げ支援事業は保育園によって細かいルールが異なるため注意が必要です。
これから選考を受けるかもしれない保育園に、細かいルールまで自分で確認するのは気が引ける作業です。そのため、保育園の細かいルールを確認するときは転職エージェントを活用しましょう。
おすすめの転職エージェントは、以下の記事で詳しく解説しています。