・公立保育園と私立保育園の違いが知りたい!
・転職したいけど、やっぱり公立保育園がいいのかな…?
・公立保育園のメリット・デメリットを教えて!
公立保育園で働きたいと思っている保育士さんは多いです。しかし、実際には公立保育園のことをよく知らない方がほとんどです。
私はこれまで5年以上保育業界で働きながら、100以上の保育施設と仕事をしてきました。そこでこの記事では、私立保育園と公立保育園の違いを詳しく解説しています。
この記事を読めば、公立保育園で働くメリット・デメリットが分かります。
- トータルで考えると公立保育園の方がメリットが多い
- ただし、公立保育園は楽園ではない
- 公立保育園にもデメリットあり・試験を受けなければ働けない
- ホワイト私立保育園を選べば公立保育園と遜色ない環境で働ける
公立保育園とは自治体が設置している保育園のこと
公立保育園とは自治体(区市町村)が設置する保育園のことです。一方、自治体以外が設置する保育園は、私立保育園と呼ばれます。
私立保育園を設置する法人にはいろいろな種類があります。
- 社会福祉法人
- 株式会社
- 学校法人
- 宗教法人
- NPO法人 など
設置法人ごとの保育園の特徴は以下で解説しています。
▶︎保育士の転職|知るべき3つの保育園運営主体|メリット・デメリットをプロが解説
公立保育園と私立保育園の違い
公立保育園と私立保育園の違いを次の項目ごとに比較します。
- 設置者・運営者
- 働いている保育士の特徴
- 保育園の設備
- 保育士の待遇
設置者・運営者
運営者によって、公立保育園は2種類に分かれます。
- 公設公営保育園
- 公設民営保育園
公立保育園には民間企業などが運営を委託されているものがあります。このような公立保育園は、「公(役所)」が「設」置し、「民」間企業などが運「営」しているため、「公設民営」保育園と呼ばれます。
一方、自治体が運営する公立保育園は「公設公営保育園」と呼ばれます。
項目 | 公立保育園(公設公営) | 公立保育園(公設民営) | 私立保育園 |
---|---|---|---|
設置者 | 自治体 | 自治体 | 民間事業者 |
運営者 | 自治体 | 民間事業者 | 民間事業者 |
公設民営保育園で働く保育士は、公務員ではなく保育園を運営する事業者に雇われることになります。
公設民営の保育園で働いても、公務員にはならないので要注意です。
働いている保育士の特徴
公立保育園と私立保育園では、働いている保育士の特徴にも違いがあります。
公立保育園
私立保育園と比べると公立保育園にはベテラン保育士が多いです。公立保育園で働く保育士は公務員になるため、ベテラン保育士が多くなる傾向にあります。
- 年功序列でお給料が上がっていく
- 産休・育休が取りやすい
公務員にはこのような特徴があるため、私立保育園と比べると公立保育園は離職率が低い傾向があります。退職者が減ることで、結果としてベテラン保育士が多くなります。
種類 | 公営保育園 | 民営保育園 |
---|---|---|
離職率 | 5.9% | 10.7% |
私立保育園
私立保育園には若手の保育士が多い傾向にあります。特に都市部では待機児童問題を解消するために多くの保育園が作られたため、新しい保育園が多いです。
保育園の設備
公立保育園
公立保育園には園舎が古い保育園が多いです。公立保育園は開園が古いことが多いことが主な理由です。
公立保育園は、園庭が広いことも多いです。
私立保育園
私立保育園には園舎が新しく設備が充実している保育園が多いです。私立保育園には歴史が浅い保育園が多いことも理由ですが、より選ばれる保育園になるために設備投資にお金をかけていることが多いです。
都市部には園庭がない保育園も結構あります。
保育士の待遇
公立保育園と私立保育園では、働く保育士さんの待遇にも違いがあります。
お給料
公立保育園と私立保育園のお給料の比較は次のとおりです。公立と私立で平均勤続年数に差があるため、そのまま金額を比較することはできません。しかし、公立の方が平均勤続年数が高く、その分お給料も高くなっていることがわかります。
職種 | 公立(常勤給与) | 公立(平均勤続年数) | 私立(常勤給与) | 私立(平均勤続年数) |
---|---|---|---|---|
全職種平均 | 328,558円 | 15.1年 | 279,265円 | 10.2年 |
施設長 | 545,053円 | 33.6年 | 532,097円 | 24.1年 |
主任保育士 | 496,623円 | 28.2年 | 383,029円 | 21.1年 |
保育士 | 287,431円 | 11.8年 | 255,415円 | 8.5年 |
若い頃のお給料に大きな差がなくても、ベテランになってからのお給料に差がつくことが多いです。
退職金
公立保育園の場合、100%退職金制度があります。公立保育園の場合は公務員の給与形態が適用されるからです。私立保育園の場合は、保育園によってまったく異なります。
労働環境
公立保育園の方が私立保育園よりも労働環境が整っていることが多いです。私立保育園の場合、労働環境は園によってまちまちです。ブラック保育園もあれば、ホワイト保育園もあります。
良い私立保育園の選び方はこちらで解説しています。
▶︎【永久保存版】保育士が転職すべき保育園の選び方【プロが教える13のチェックポイント】
「公立保育園で働けば公務員になれる!人生勝ち組!」みたいに考えている人がたまにます。しかし、現実はそんなに甘くないことを知っておいた方がいいです。公立保育園で働いて、パワハラで休職してしまったり、過労で体を壊してしまう方もいます。
その他の特徴
公立保育園にはその他にも次の特徴があります。
- 配慮が必要な子どもの受け入れが多い
- 保護者のクレームが少ない
配慮が必要な子どもの受け入れが多い
私立保育園と比べると区立保育園の方が配慮が必要な子どもの受け入れが多い印象です。
- 公立保育園には私立保育園より経験がある保育士が多い傾向にあるから
- 自治体が「まずは公立保育園で対応するべき」と考えることが多いから
保護者のクレームが少ない
公立保育園はベテラン保育士が多いため、園運営が安定していることが多いです。結果として、開園から日が浅い私立保育園より保護者のクレームが少ないことが多いです。
保育士が公立保育園で働くメリット
保育士さんが公立保育園で働くメリットは次のとおりです。
- 公務員の身分になれる
- 保育士としての経験値が貯まりやすい
公務員の身分になれる
公務員は業務の特性上、他の職業と比べると身分が保障されています。よく言われるとおり、よっぽどのことがない限り公務員がクビになることはないです。
公務員の給与水準
公立保育園で働く場合は、公務員の給与水準が適用されることになります。統計的には私立保育園より公立保育園の方が給与は高いです。
とはいえ、公務員の給料はそこまで高いわけではないので注意が必要です。
公立保育園のお給料に過度な期待は禁物です。
私立保育園のお給料アップ制度は次の記事で解説しています。
▶︎【給料が安い?】保育士さんが知っておきたい給料引き上げ制度【転職を考える方必見】
高待遇の保育園を探すなら、企業内保育所がおすすめです。
▶︎企業内保育所の求人を探すコツ3選|メリット・デメリットから種類までプロが徹底解説!
年功序列
公務員の給与体系は、基本的に年功序列です。つまり、年齢を重ねると自然に給料が上がっていくということです。
保育士としての経験値が貯まりやすい
公立保育園で働いていた経験は、他の保育園への転職の際にプラスになることが多いです。ベテラン保育士が多い公立保育園での保育経験は私立保育園での保育経験以上に評価されることが多いです。
公立保育園の役職者には次のポストが用意されることも
公立保育園の園長・副園長クラスになると、退職後も別のポストが用意されることも多いです。例えば、保育園の運営指導を行う部署などで、巡回指導を行うなどです。
公立保育園で園長・副園長クラスまで出世すると、退職後の仕事にも困らないことが多いです。
保育士が公立保育園で働くデメリット
公立保育園のデメリットは次の4つです。
- 異動がある
- 保育園以外に配属になる可能性がある
- 保育園が民営化する可能性がある
- 宿舎借り上げ支援事業が使えない
異動がある
公立保育園の場合、3〜5年ごとに異動があります。良い環境に恵まれて「ずっとここで働きたい!」と思っても、必ず異動することになります。
公立保育園で働く保育士さんは、環境の変化に対応し続けることが求められます。
保育園以外に配属になる可能性もある
公立保育園の場合、異動先が保育園以外になることもあります。保育園以外の異動先は、例えば次のようなものです。
- 児童相談所
- 子ども家庭支援センター
- 私立保育園の指導員
どこも大変な仕事が多いところです。
保育園が民営化する可能性がある
公立保育園だからといって安心はできません。自治体が公立保育園を民間事業者に運営委託するケースが増えています。いわゆる「公設民営」の保育園になるということです。
行政のコスト削減
行政のコスト削減が叫ばれる中、保育園の民営化は有効な手段です。公立保育園が民営化されたとしても、そこで働く保育士がクビになることはおそらくないです。ただし、保育園以外の慣れない環境へ異動することになります。
宿舎借り上げ支援事業が使えない
公立保育園で働く保育士は公務員のため、宿舎借り上げ支援事業を使えません。
宿舎借り上げ支援事業は家賃を最大82,000円まで補助してもらえる超お得な制度です。制度は今後改悪されていく可能性もありますが、現時点では宿舎借り上げ支援事業は保育士さんだけが使える特権です。
保育士さんなのに、宿舎借り上げ支援事業が使えないのは大きなデメリットだと言えます。
宿舎借り上げ支援事業の詳細は以下の記事で解説しています。
▶︎【いつまで続く?】保育士宿舎借り上げ支援事業をプロが徹底解説!【転職を考える方必見】
公立保育園で働く方法
公立保育園で働くためには「常勤職員」が「非常勤職員」になる必要があります。常勤職員は企業でいう正社員になります。常勤職員になるためには、公務員試験を受ける必要があります。
非常勤職員は常勤職員以外のすべての職員を指します。一般的には1年契約などの有期雇用の職員がほとんどです。公立保育園で非常勤職員として働くために公務員試験を受ける必要はないです。
常勤保育士になる方法
常勤保育士になるためには公務員試験を受ける必要があります。試験は各自治体が実施するため、内容は自治体によって異なります。例えば東京23区の場合は次のような内容が多いです。
- 年齢要件
-
昭和59年4月2日~平成14年4月1日までに生まれた人
- 申込期間
-
6月下旬〜8月上旬
- 1次試験の日程
-
8月下旬
- 1次試験の内容
-
▶︎教養・専門試験(五肢択一式40題・90分)
▶︎作文(課題式60分・800字程度)
<一般教養の範囲>
法律、経済、政治、文学、日本史、地理、物理、化学、文章理解(英文含む)、数的処理、判断推理、資料解釈、社会事象、地方自治法、地方公務員法
<専門試験の範囲>
社会福祉法、保育原理、教育原理、栄養学、児童福祉法、児童心理学、生理学、精神保健、楽譜、絵画、障害児保育、保健衛生、対人関係、老人福祉 - 2次試験の日程
-
9月下旬~10月上旬
- 2次試験の内容
-
▶︎個別面接
- 最終合格発表
-
10月中旬
公務員試験の受験料は無料なので、公立保育園で働きたいならとりあえずチャレンジしてみるのも手です。中には勉強せずに合格する方もいます。
公務員試験には年齢制限がありますが、保育士試験はかなり年齢制限が緩いのが特徴です。東京23区の場合、だいたい37歳くらいまで受験可能です。
非常勤保育士になる方法
非常勤保育士になるために、公務員試験を受ける必要はないです。非常勤保育士は次の方法で募集されることが多いです。
- ハローワーク
- 自治体のホームページ
非常勤保育士として働きたい自治体がある場合、直接その自治体へ連絡するのが一番手っ取り早いです。公立保育園の非常勤保育士として働くために、転職サイトなどを活用する必要はないです。
公立保育園と私立保育園の違いまとめ
公立保育園と私立保育園を比較した傾向は次のとおりです。
比較項目 | 設置者・運営者 | 保育園の設備 | 保育士の待遇 | その他 |
---|---|---|---|---|
公立保育園 | 自治体(区市町村) | 園舎が古い 園庭が広い | 年功序列の給与形態 退職金あり | 要配慮児の受け入れが多い 保護者のクレームが少ない |
私立保育園 | 民間事業者 | 設備が整っている 園庭が小さい(ない) | 施設による | 新しい保育園が多い 施設によって環境が大きく違う |
「公立保育園は試験を受けなきゃだから無理…」と思う方は、環境の良い私立保育園への転職をおすすめします。私立保育園にはブラック保育園も多いですが、中には公立保育園を超えるような待遇の保育園も存在します。
公務員試験を受けるのが難しい方も、諦めずに行動すれば必ず今より良い保育園は見つかります。
私立保育園の求人の探し方はこちらで解説しています。
▶︎【保育士の転職】おすすめの求人の探し方5選|失敗しない方法を業界のプロが解説