- 働きやすい保育園の見分け方がわからない…
- 少しでも労働環境が良い保育園を選びたい!
- 保育園を選ぶときのチェックポイントが知りたい!
待機児童問題を解決するために、ここ数年で保育園の数は急増しました。残念ながら、保育園の数に比例して劣悪な労働環境の保育園も増えています。
私はこれまで保育業界で5年以上働く中で、100以上の保育施設と関わってきました。その中で、保育士さんがすぐに辞めてしまう保育園や、反対に保育士さんが辞めない保育園をたくさん見てきました。
そこでこの記事では「働きやすい保育園の見分け方」をチェックポイント形式で解説しています。この記事を読めば、働きやすい保育園の見分け方が分かります。
これまでの経験を記事に詰め込みました。他では読めない情報が満載なので、ぜひ参考にしてください。
企業内保育所には労働環境が良い保育園が多いため、特におすすめしています。企業内保育所の選び方は以下の記事で解説しています。
保育園選びに悩んでいる方には、企業内保育所がおすすめです。
働きやすい保育園ランキングは以下の記事で紹介しています。
プロが選ぶ!保育士が働きやすい保育園3選|企業ランキングTOP14【2023年版】
働きやすい保育園の見分け方|お給料編
保育士さんに聞いた保育園退職理由の第2位(29.2%)が「給料が安い」です。(「保育士の現状と主な取組(令和2年8月24日)」より)そこでまずは、お給料アップのために確認必須のポイントを3つご紹介します。
家賃補助制度が使えるか
家賃補助制度が使える保育園で働けば、毎月の家賃をほとんど払う必要がなくなります。
家賃補助制度はどこの保育園でもあると思ってた。制度がない保育園もあるのかな。
認可外保育施設など、制度が使えない保育園もあるので注意が必要です。家賃補助があっても、補助してくれる金額がほかの保育園より安いこともあります。
保育士さんの家賃を補助する制度は、正式には「宿舎借り上げ支援事業」という国の制度です。保育園は「宿舎借り上げ支援事業」を活用して保育士さんの家賃を補助しています。
宿舎借り上げ支援事業は家賃を補助する制度
宿舎借り上げ支援事業は、最大で月8万2千円まで、保育士さんの家賃を保育園が補助する制度です。
年間で考えると、毎月のお給料とは別に最大で約100万円を保育園に負担してもらえることになります。
月8万2千円まで補助されるってことは、家賃9万円の物件なら8千円で住めるってことね。
宿舎借り上げ支援事業は超お得な制度。保育士さんなら必ず活用すべきです。
宿舎借り上げ支援事業を使うときは注意が必要
保育園によって補助金額の上限や細かいルールが異なります。たとえば、保育園によっては以下のようなルールがあります。
- 交通費補助の対象外
- 保育園から2km以内の物件を選ぶ必要がある
- 同居人がいる場合は対象外
宿舎借り上げ支援事業を使う予定がある場合は、必ず事前に細かいルールを確認しておくのがおすすめです。
保育園の近くに住む場合、保護者と生活圏が重なる可能性が高いです。気になる方は注意しましょう。
狙い目は補助金額が高くてルールがゆるい自治体の保育園
基本的にそれぞれの保育園は、自治体(区市町村)のルールの中で、保育園独自のルールを作っています。そのため、補助してもらえる金額の上限が高く、ルールがゆるい自治体にある保育園が狙い目です。
自治体の補助内容未満の制度にしている保育園もあるので注意が必要です。
例▶︎ 新宿区の補助上限額は8万2千円なのに、補助上限額を7万円に設定している保育園
自治体の補助上限額より安い金額しか補助してくれない保育園もあるの?
系列園が多い保育事業者の場合、補助上限額を一律にしていることがあります。補助上限額は安い自治体の金額に合わせていることが多いです。
自治体の制度は自分でも調べられる
自治体(区市町村)の制度を調べるときは、まずは自分でインターネットで調べてみましょう。
インターネットで調べてみて、わからないことがあれば自治体に直接電話で聞いてみることもできます。ただし、自治体に電話するときは具体的な質問を事前に用意してから質問するようにしましょう。
自治体の担当者によって対応はまちまちですが、丁寧に質問した方が詳しい回答をもらいやすいです。
良い質問例▶︎ ○○市の宿舎借り上げ支援事業には物件の場所の制限はありますか?
悪い質問例▶︎ ○○市の宿舎借り上げ支援事業はどんな制度ですか?
宿舎借り上げ支援事業については以下の記事でさらに詳しく解説しています。
【いつまで続く?】保育士宿舎借り上げ支援事業をプロが徹底解説!【転職を考える方必見】
給料引き上げ制度を活用しているか
給料引き上げ制度を活用している保育園を選ぶことで、毎月のお給料を上げることができます。
今給料引き上げ制度を活用していない保育園で働いている方は、制度を活用している保育園に転職すれば月数万円の給料アップも夢ではありませんよ。
転職するときは、給料引き上げ制度を活用している保育園を選ぶことをおすすめします。
保育士の給料には引き上げ制度がある
給料引き上げ制度とは、言葉どおり保育士さんのお給料をアップさせてくれる制度です。保育士さんの給料引き上げ制度にはいろいろな種類があります。
残念ながら給料引き上げ制度を使うかは、保育士さんには決められません。どの給料引き上げ制度を使うか・使わないかは保育園が決めているため、制度を使ってほしい保育士さんは保育園選びに注意が必要です。
国の給料引き上げ制度は活用必須
「少しでもお給料の高い保育園で働きたい!」と思っている方は、「処遇改善等加算Ⅱ」という制度を活用している保育園で働くのがおすすめです。
「処遇改善等加算Ⅱ」は国の制度なので、全国の保育園で活用できる制度です。
お給料の観点からは、「処遇改善等加算Ⅱ」を活用していない保育園はおすすめできません。
「処遇改善等加算Ⅱ」は「おおむね経験が3年以上ある保育士さんの月給を5千円〜4万円アップさせる」制度です。
よく似た名前の制度で、「処遇改善等加算Ⅰ」という制度もあるので、確認するときは注意してください。
区市町村独自の制度もある
給料引き上げ制度には色々な種類ががありますが、国が実施している制度が最もメジャーです。国の制度に上乗せして、さらに独自の補助を実施している都道府県や区市町村もあります。
たとえば東京都には保育士等キャリアアップ補助金という独自の給料引き上げ制度があります。東京都以外にも、独自の引き上げ制度を実施している自治体はありますが、全国的には実施していない自治体が大半です。
東京都内の保育園で働く保育士さんは、保育士等キャリアアップ補助金を使っている保育園を選ぶことをおすすめします。
以下の記事でさらに詳しく給料引き上げ制度について解説しています。
【給料が安い?】保育士さんが知っておきたい給料引き上げ制度【転職を考える方必見】
適正なお給料を払ってくれるか
適正なお給料を払ってくれる保育園を選ばないと、これからずっと損をすることになってしまいます。適正なお給料を払ってくれる保育園を選ぶためには、「保育園さんの適正なお給料」を知っておく必要があります。
国が公表している保育士の年収目安
「保育士さんの適正なお給料」がいくらなのかは難しい問題ですが、国が公表している保育士さんの年収目安はひとつの参考になります。以下が国が想定している保育士さんの年収です。保育園がある場所によって金額が変わっています。
区分 | 20/100地域 | 16/100地域 | 15/100地域 | 12/100地域 | 10/100地域 | 6/100地域 | 3/100地域 | その他地域 | 全国平均 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
該当地域 ※抜粋 | 東京23区 | 横浜市 大阪市など | さいたま市 千葉市など | 船橋市 神戸市など | 福岡市 京都市など | 仙台市 宇都宮市など | 札幌市 新潟市など | 熊本県 大分県など | – |
所長 | 556万円 | 537万円 | 532万円 | 518万円 | 509万円 | 490万円 | 476万円 | 462万円 | 494万円 |
主任保育士 | 522万円 | 505万円 | 500万円 | 487万円 | 479万円 | 462万円 | 449万円 | 436万円 | 465万円 |
保育士 | 442万円 | 427万円 | 424万円 | 413万円 | 405万円 | 391万円 | 380万円 | 369万円 | 394万円 |
調理員等 | 366万円 | 354万円 | 351万円 | 342万円 | 336万円 | 324万円 | 315万円 | 306万円 | 327万円 |
「該当地域をもっと詳しく知りたい」という方はこちらのPDFの44ページで確認できます。
国は表の金額について「保育園によって働いている人の経験や人数が違うから、表の金額以下でも給料が安いとは決めつけられない」といった内容の注意書きをつけています。
そのため、表の金額よりお給料が安い保育園も多いのが実情ですが、なるべく国の想定年収に近いお給料の保育園で働くことをおすすめします。
表の金額には宿舎借り上げ支援事業による家賃補助分や、給料引き上げ制度によるお給料アップ分は含まれていません。ですが、残念なことに表の年収はあくまで参考額のため、国の想定より年収が安い保育園に罰則があるわけではありません。
最終的な保育士さんの給料は各保育園(法人)が決めていて、国の想定年収まで届いていない保育園の方が多いのが現状です。
東京都のほとんどの保育園が、ホームページで以下の情報を公表しています。
- 1年目の初任給目安
- 5年目のお給料目安
- 7年目のお給料目安
公表されているお給料は、以下の方法で確認できます。
- こぽる(東京子供・子育て施設ポータル)にアクセスする
- 地図左上の「探す」をクリックする
- お好きな方法で施設を検索する(住所・区市町村・法人名称・施設名称)
- 施設情報の画面にある「モデル賃金(PDF)」をクリックする(「施設・事業所等関連情報」の欄)
働きやすい保育園の見分け方|労働環境編
働く環境は保育園によって大きく違います。ここからは「労働環境が良い保育園」の見分け方をご紹介します。
休暇制度の取得率が水準以上か
・お休みをたっぷり取ってプライベートも充実させたい!
・育休もしっかり取って、職場復帰したい!
・妊娠しても安心して働きたい!
こんな願いを叶えるためには、しっかりお休みを取れる保育園を選ぶことが大切です。
保育園の休暇制度は必ず事前に確認しておきましょう。
確認しておくべき休暇制度
特に以下の休暇は取得率をできるだけ事前に確認しておきましょう。
- 有給休暇
- 産前産後休暇
- 育児休暇
休暇制度を確認するポイント
確認するときのポイントは「制度があるかどうか」ではなく「取得率(利用率)」です。これらの休暇制度は法律で決まっているため、制度そのものがない保育園は存在しないはずです。
ただし、実際の取得率は保育園によって大きく異なります。取得率は転職エージェントに確認してもらうのがおすすめです。
転職エージェントの活用方法は以下の記事で解説しています。
【保育士求人の探し方】転職エージェント活用完全マニュアル【おすすめをプロが解説】
職場の雰囲気が合いそうか
「どんな仕事をするか」も大切ですが、やっぱり「どんな人と働くか」が楽しく働くために一番大切。充実した保育士生活を送るためには、職場の雰囲気がよい保育園で働きたいですよね。
人間関係には要注意
保育園退職理由の第1位(33.5%)が職場の人間関係です。(「保育士の現状と主な取組(令和2年8月24日)」より)
ですが、残念なことに働く前から確実に人間関係を確認する方法はないといっていいでしょう。だからこそ、退職理由の第1位になっているともいえます。
実際に働いている人(それも信頼できる人)の話が聞ければそれに越したことはありませんが、なかなかそんな人に話を聞くチャンスもないと思います。
おすすめは園見学
1番のおすすめは「園見学」です。働いている職員の雰囲気を実際に見てみるのが誰でもできる方法のなかでは1番確実といえます。
もちろん、園見学に行ったからといって100パーセント人間関係のトラブルを避けられるわけではありませんし、「面倒くさいな」と感じる方も多いと思います。ですが、本気でよい保育園を見つけたいのならできる限り行くべきです。
見学に行くことで確認できるポイントはほかにも沢山あります。
園見学については以下の記事でさらに詳しく解説しています。
【転職を成功させる】保育士さんの園見学マニュアル【チェックリスト・お礼状例文あり】
保育システム(デジタル機器)を導入しているか
- 毎日たくさんの保育日誌を手書きするのが大変…
- 事務仕事が多くて肝心の保育に集中できない!
- 手作業の仕事が多くて残業が多い…
保育士さんのこういった悩みは、保育システムの導入で解決できるものです。同じような悩みを抱えている方は、保育システムを導入している保育園で働くのがおすすめです。
保育システムは保育士の事務負担を軽くする
保育園退職理由の第3位(27.7%)は「仕事量が多い」、第4位(24.9%)は「労働時間が長い」です。(「保育士の現状と主な取組(令和2年8月24日)」より)
こうした問題を解決してくれるのが、保育システムです。なぜ保育システムがこうした問題を解決してくれるかというと、業務がデジタル化されることで保育士さんの手作業の事務仕事が減るからです。
保育システムには色々な機能がある
保育システムには以下の機能が備わっていることが多いです。
- 園児台帳の作成・管理
- 指導計画の作成
- 保育日誌の作成
- 園児の登園及び降園の管理
- 保護者との連絡
たとえば、保育日誌は保育システムを使うことで手書きよりもグーンと早く作成できます。
園見学に行く場合はどんな風に保育システムを活用しているか直接確認してみましょう。
デジタルに強いのはキャリアにプラス
保育園に限った話ではないですが、いろいろな仕事で今以上にデジタル化が進んでいくことは確実です。なるべく早くデジタル機器(保育システム)に触れておくことは、今後のキャリアアップにもつながるはずです。
デジタル機器に慣れている方が、今後の転職でもプラスになる可能性が高いです。
国は保育園が保育システムを導入するための補助金制度を用意しています。そのため、補助金を活用して保育システムを導入する保育園は増えています。にもかかわらず、いまだに保育システムを導入していない保育園は、園長の方針などで手作業に強いこだわりを持っている可能性が高いです。手作業へのこだわりが強い保育園は、保育士さんの仕事量が多くなり、労働時間が長くなる傾向があるので注意が必要です。
研修受講環境が整っているか
- スキルアップしてもっと保育士として成長したい!
- 身につけたスキルを評価してもらいたい!
- がんばって勉強して、お給料も上げたい!
このように今後のキャリアについても真剣に考えている保育士さんは、研修受講環境がしっかり整っている保育園で働くことをおすすめします。
働いている保育士さんのキャリアアップについて真剣に考えている保育園は、必ず研修体制が整っています。
園長等を講師とした内部研修ばかりで、保育士さんを外部の研修に出してくれない保育園の場合、保育士さんの成長・キャリアアップへの意識が薄い可能性が高いといえます。
「保育士等キャリアアップ研修」は要チェック
特に国が2017年に創設した「保育士等キャリアアップ研修」は、これから長く保育士を続けていくなら受講必須の研修といえます。
保育園の研修受講環境は転職エージェント経由で確認しましょう。
研修受講の意欲が高い保育士さんは一般的に成長意欲の高い方だと捉えられるため、積極的に確認すべきです。
- 処遇改善等加算Ⅱ(給料引き上げ制度)の対象職員になるために受講必須の制度(現在は経過措置期間中だが、2023年度以降段階的に必須化予定)
- 国の制度のため、修了証は転職後も有効(全国の保育園で使える)
- 必ず受講環境が整っている保育園を選ぶべき
保育士等キャリアアップ研修については以下の記事でさらに詳しく解説しています。
【給料アップ】保育士等キャリアアップ研修をプロが徹底解説【転職を考える方必見】
開所時間が長すぎないか
「遅い時間まで働きたくない!」「できるだけ早く帰りたい!」と思っている方は、保育園の開所時間を調べておきましょう。
保育園の開所時間は労働時間に直結します。
認可保育園の場合、開所時間は通常11時間ですが、私立保育園の場合は延長保育時間が園によって異なることがあります。無認可(認可外)保育園は園によって開所時間は大きく異なるため、注意が必要です。
各自治体が定めている開所時間は自治体のホームページで確認可能です。
「土曜日の出勤が少ない保育園で働きたい!」と思っている保育士さんには、企業内保育園がおすすめです。
企業内保育園は大企業が従業員のために設置している保育園なので、土曜日の利用者が少ないことが多いです。
企業内保育園については以下の記事で詳しく解説しています。
▶︎企業内保育所の求人を探すコツ3選|メリット・デメリット・種類までプロが徹底解説!
保育理念に共感できるか
保育園の保育理念を確認し、自分の保育観と離れていないか事前に確認しておきましょう。
保育園の保育理念は志望動機を作るときにも役立ちます。
ただし、保育理念が実際の保育の現場に浸透していないこともよくあるため、参考程度に留めておく方が無難。実際に働き始めてから、「保育理念からイメージしていた内容と違った」といった感想はよく聞く話です。
実際の保育内容を確認する方法としては、実際に様子をみることができる園見学が一番オススメです。
保育理念は保育園のホームページや第三者評価の結果で確認しましょう。
働きやすい保育園の見分け方|施設情報・保育内容編
ここからはかなり専門的な内容になるので、「難しくてよくわからない!」と思った方はスパッと飛ばしてもOKです!「難しくてもいいから、少しでもよい保育園を選びたい!」という方はがんばってついてきてくださいね。
かなり専門的な内容もありますが、働く保育園選びに必ず役立つ情報です。
定員の空きが少ない保育園か
働くなら定員に対して空きが少ない保育園がおすすめです。
近隣保育園の状況にもよりますが、基本的に空きが少ない保育園は人気の保育園だといえます。待機児童を解消しようと保育園を作りすぎた結果、すでに一部の地域では空きが目立つ保育園が増えはじめているため注意が必要です。
人気がない保育園には理由がある
これまでの経験上、空きが多い保育園(人気のない保育園)はなんらかの問題を抱えていることも多かったです。
人気がない保育園の理由としては、場所が悪い、施設が古い、ネットの口コミが悪いなどが考えられます。
新規オープンの保育園も申し込みが少なくなることがあります。新規オープンの保育園は「まだ保育園の運営に慣れていないかも」と思われやすく、子どもを預けることに不安を感じる保護者が多くなるためです。
認可保育園の場合、定員の空きは各自治体のホームページで簡単に調べることができるので、必ず確認しておきましょう。
「保育園は税金で運営されているから潰れない」と思っていませんか?たしかに保育園の運営費は主に税金ですが、運営している民間企業が倒産してしまう可能性もゼロではありません。認可保育園の運営費は基本的に「国が決めた単価×児童数」で決まるため、子どもの人数が減れば運営費も減額されます。人気のない保育園は今後淘汰されていく可能性が高いといえます。
各種検査結果に問題はないか
保育園が受けた検査結果で「問題がある保育園かどうか」を確認できます。検査結果はインターネットで調べることができるので、働きたい保育園がある程度決まっている方は確認しておきましょう。
2020年11月、足立区の保育園を運営する社会福祉法人が経営危機に陥るという事態が起きました。原因は、保育園で働いていた元園長等が未払い賃金の支払いを求めて法人を訴えたためです。こういった問題のある保育園を見抜くためにも、保育園が受けた検査結果を確認することが大切です。
第三者評価の結果を確認する
特に第三者評価の結果は、転職を考えている保育士さんにも参考になります。第三者評価とは、保育園と利害関係のない第三者的な立場の専門機関が、主に保育園のサービスについて評価するものです。
第三者評価の結果には、「事業者の理念・方針」や「期待する職員像」などの情報も掲載されていることがあります。第三者評価は、国が5年に1回は受けることを推奨していますが、地方では受審が進んでいないのが実情のようです。
ただし、東京都では3年に1回受けることを実質義務化しています。東京都の保育園で開園から4年以上経過しているにもかかわらず、一度も第三者評価を受けていない保育園は要注意です。
第三者評価の結果はホームページでかんたんに確認できます。東京都の保育園の第三者評価の結果は以下のとおり。
- 福ナビ(東京都福祉サービス第三者評価)にアクセスする
- ページ中段の「評価結果を検索する」から施設を検索する(「事業所名から探す」がおすすめ)
- 検索結果の「事業所名称」をクリックする
自治体の検査結果を確認する
第三者評価のほかには、自治体が行なっている検査結果も参考になります。保育園が適切に運営されているか確認するため、自治体は定期的に現地調査を行なっています。認可保育園と無認可保育園では検査を行う自治体が異なることが多いです。
施設の種類 | 認可保育園 | 無認可(認可外)保育園 |
---|---|---|
検査を行う自治体 | 区市町村 | 都道府県(例外あり) |
自治体によっては検査の結果をホームページで公表しています。
ベビーホテル、事業所内保育施設、院内保育施設、その他施設一覧
※「認可外保育施設(ベビーホテル・事業所内・院内・その他)一覧」ファイルのURLから確認
平均経験年数に問題はないか
東京都の保育園の場合、「平均経験年数」や「財務情報」をホームページで簡単に確認することができます。それぞれがどういったものなのかはこの後で説明します。「平均経験年数」や「財務情報」を確認することで、以下のことを知ることができます。
- 保育園で働いている人の年齢の傾向
- 区市町村からちゃんと補助金をもらっている保育園か
- 保育士さんのお給料にしっかりお金を使っている保育園か
ここまで来るとかなり専門的な内容になりますが、どれも「よい保育園選び」に役立つ内容です。
東京都の保育園は、平均経験年数や財務情報をホームページで簡単に確認できるため、必ず確認することをおすすめします。残念ながらほかの多くの地域ではこれらの情報がホームページで公表されていませんが、どちらも非常に重要な指標なので、知識として知っておいた方がいい内容です。
平均経験年数とは
平均経験年数とは簡単に言ってしまうと「その保育園で働いている職員の経験年数の平均」です。
平均経験年数が高いほど、その保育園がもらえる運営費の金額が上がります。平均経験年数の計算の対象になるのは以下の条件を両方満たしている職員だけです。
- 1日6時間以上の勤務
- 月20日以上の勤務
そのため、どれだけベテランの保育士さんであっても、パート勤務などで条件を満たしていない場合はその保育園の平均経験年数の計算に含めることはできません。
ちなみに、保育士さん個人の経験年数を計算するとき、条件を満たして働いていた過去の期間も経験年数として数えられます。
たとえば、今の保育園で1年しか働いていない方でも、過去に保育園等で10年働いていた経験があれば、その保育士さんの経験年数は11年になります。
仮に以下の保育園があった場合、その保育園の平均経験年数は5年になります。
- A保育士 経験年数10年
- B保育士 経験年数4年
- C保育士 経験年数1年
- 保育園の平均経験年数 3人÷(10年+4年+1年)=5年
保育園の平均経験年数が高いほど、自治体が保育園に支払う運営費の金額が上がります。保育士さん個々の給料は各保育園が決めますが、保育士さんの経験年数によって給料を決めている保育園も多いです。そのため、保育士さん個人としても経験年数を増やしていくことが、結果的に今後の給料アップにつながります。パート勤務だったなど、条件を満たしていなかった期間は経験年数に含めてもらえないため、この先キャリアを重ねていく上で注意が必要です。
平均経験年数から職員構成の傾向を確認する
平均経験年数からわかる職員構成の傾向は以下のとおりです。
平均経験年数 | 新人保育士 | ベテラン保育士 |
---|---|---|
低い | 少ない | 多い |
高い | 多い | 少ない |
一般的には、平均経験年数が高いほどベテラン保育士が多くなります。8年がおおよその平均経験年数の目安(平均)になります。
8年が目安(平均)となる理由は、保育所で勤務する保育士の半数が経験年数8年未満の保育士だからです。(「保育士の現状と主な取組(令和2年8月24日)」より)
私の感覚では、平均経験年数の高い保育園の方がトラブルも少なく、保育士さんの退職も少ない印象があります。
ベテラン保育士さんが多い保育園は、園運営も安定している印象です。
財務情報に問題はないか
財務情報から保育園のお金の使い方を確認する
保育園の運営資金がどのように使われているか確認することも大切です。東京都の場合、ほぼすべての保育園が財務情報を公表しています。東京都の保育園は以下の手順で平均経験年数・財務情報を確認できます。
- こぽる(東京子供・子育て施設ポータル)にアクセスする
- 地図左上の「探す」をクリックする
- お好きな方法で施設を検索する(住所・区市町村・法人名称・施設名称)
- 施設情報の画面にある「財務情報(PDF)」をクリックする(「施設・事業所等関連情報」の欄)
上の手順で財務情報(PDF)を開いたら、確認すべきポイントは以下のとおり。
見るべきポイント | 確認する目安 |
---|---|
1ページ目「保育士等キャリアアップ補助金収入」の金額 | 0円になっていないか |
1ページ目「保育サービス推進事業補助金収入」の金額 | 0円になっていないか |
2ページ目「事業活動収入に占める人件費の割合」のパーセント | 42.4%以上か ※社会福祉法人は55.4%以上か |
最初の2つでは「保育園がちゃんと補助金をもらっているか」を確認しています。3つめでは「入ってきたお金をちゃんと職員のお給料に使っているか」を確認しています。3つめの目安の根拠は2015年度の平均値です(少し古い情報のため、あくまでも参考程度)。ちなみに、社会福祉法人だけ人件費率の目安がちがうのは、ほかの法人(株式会社など)と制度が異なるからです。
どちらかの補助金をもらっていなかったり、人件費の割合が低すぎる保育園は要注意です。
社会福祉法人などの法人の種類は以下で詳しく解説しています。
保育士の転職|知るべき3つの保育園運営主体|メリット・デメリットをプロが解説
財務情報が掲載されていない保育園は、そもそも保育園が公表を希望していない可能性が高いです。財務情報を公表していない保育園には注意が必要です。
働きやすい保育園の見分け方まとめ
ここまでのチェックポイントをまとめると以下になります。
チェックポイント | 宿舎借り上げ支援事業 | 給料引き上げ制度 | 給料水準 | 休暇制度 | 職場の雰囲気 | 保育システム | 研修受講環境 | 開所時間 | 定員の空き | 各種検査結果 | 平均経験年数 | 財務情報 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
判断基準 | 制度を使えるか | 処遇改善等加算Ⅱを活用している保育園か | 国の想定年収に近い年収か | 取得できるか | 自分に合いそうな雰囲気か | 導入しているか | 研修受講制度が整っているか(特に「保育士等キャリアアプ研修」) | 開所時間が長すぎないか | 近隣の園と比べて空きが目立っていないか | 第三者評価・自治体の検査結果に問題がないか | 低すぎないか(おおむね8年以上) | 自治体の補助金を活用しているか・人件費比率が水準以上か |
確認方法 | 自分で調べる・転職エージェントに確認してもらう | 転職エージェントに確認してもらう | 自分で調べる | 転職エージェントに確認してもらう | 園見学で確認する | 転職エージェントに確認してもらう・園見学で確認する | 自分で調べる・転職エージェントに確認してもらう | 自分で調べる | 自分で調べる | 自分で調べる | 自分で調べる | 自分で調べる |
すべてのチェックポイントをクリアしている保育園をみつける必要はありません。大切なのは、自分が保育園を選ぶ上で「ここは譲れない!」というポイントを考えて、そのポイントをクリアしている保育園を選ぶことです。
「もっと簡単に働きやすい保育園をみつけたい!」という方には、企業内保育所の求人を探すのがおすすめです。企業内保育所には労働環境が良い保育園が多いからです。
企業内保育所の詳細は以下の記事で解説しているので参考にしてください。